【書評・要約】『なぜ部下とうまくいかないのか』でマネジメントを学ぼう
「マネージャーなどの管理職として一皮向けたい!」という方におすすめな書籍の1つが『組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学』です。マネジメントについて語った書籍は数多くありますが、特に「人間の成長」について成人発達理論の観点で深く学べる良書です。
本記事では本書の書評・要約をするとともに、自分が学んだメンバーの育成や成長についてまとめます。メンバーをどうすれば成長・育成できるか?などの課題を抱えている人はぜひ参考にしてください^^
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書籍『なぜ部下とうまくいかないのか』とは?
本書は成人発達理論をテーマにして、主人公である上司がマネジメントで悩んでいる課題を克服していき、上司と部下の成長を描いていく物語となっています。本書のタイトルにもあるとおり、人も組織も変わることができる。自分が変われば部下も変わる。部下が変われば自分も変わる。自分と部下が変われば組織も変わることができる。成人発達理論はそういう力を秘めているということも理解していけます。
本書は大手メーカーのマネージャーである主人公が部下のマネジメントで悩んでいるところを人材開発コンサルタントと出会うことで立派なマネージャーとして成長していくという物語形式で書かれています。例えば、「部下との関係がうまく行かない」、「部下が自分のことしか考えずチーム主導で動いてくれない」、「他人任せな人材が多くて自ら組織を変革する社員がいない」、などの多くのマネージャーや管理職が悩む課題をひとつひとつ解決していきます。
書籍名はなかなかインパクトがありますが(笑)、内容は一級品です。マネージャーとして悩めるすべての人におすすめの一冊です。
▼書籍概要
書籍名 | 組織も人も変わることができる! なぜ部下とうまくいかないのか 「自他変革」の発達心理学 |
発売日 | 2016/3/30 |
著者 | 加藤洋平 |
ページ数 | 215ページ |
出版社 | 日本能率協会マネジメントセンター |
本の概要・ おすすめポイント | 本書は物語形式で書かれており、大手メーカーのマネージャーである主人公が「部下との関係がうまく行かない」、「部下が自分のことしか考えない」など、部下のマネジメントやコミュニケーションで悩んでいるところを人材開発コンサルタントと出会うことで立派なマネージャーとして成長していくという内容です。 |
どんな人におすすめか | ・課長やマネージャーとして部下やメンバーの育成・管理・コミュニケーションに悩みがある人 ・具体的なマネジメントの悩みをどのように解決すべきか知りたい人 ・物語形式でのインプットが好きな人 |
中身(目次) | プロローグ 課長山口光のモノローグ 第1章 何をすれば関係は良くなるのか―成人発達理論とは何か 第2章 自分に関係することにしか関心を寄せない部下―道具主義的段階への対処法 第3章 上司には従順だが意見を言わない部下―他者依存段階への対処法 第4章 自律性が強すぎて、他者の意見を無視する部下―自己主導段階への対処法 第5章 多様な部下との関わりから他者の成長に目覚める―自己変容・相互発達段階における変革型リーダーへの成長 エピローグ 一年で何が変わったか 参考資料 5つの発達段階の要約 |
読んだ人のクチコミ | ・課長として同じような悩みを抱えていたので腑に落ちました ・対話形式で読みやすく、頭にも入りやすい書籍です ・メンバーとのコミュニケーションに悩んでいたので、本書のノウハウがとても参考になりました |
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書評・要約|なぜ部下とうまくいかないのか
まずは『なぜ部下とうまくいかないのか』で特に重要なポイントを要約し、まとめてご紹介します。
本書の内容としては、まず大前提のこととして「部下」や「メンバー」という言葉で一括りにしがちですが、その中には多様な個性を持つ複数の人間が含まれていることを認識する必要があります。なので、「部下の育成を促す」などのテーマを掲げたとしても、その対象者である「部下」には様々な特徴があり、いろいろな段階の人がいることを忘れてはいけません。言い換えれば、ひとりひとりの個性や段階に応じたコミュニケーションやマネジメントが求められるということです。
また、部下やメンバーを成長させることを課題においているが、上司である自分自身も着実に成長していく必要があることも忘れてはいけません。部下が成長することで自分も成長できるし、自分が成長することで部下も成長できる。部下の成長支援に関わることで、部下が成長し、めぐりめぐって自分自身も成長できる。(例えば、部下の発達段階におうじた指導をできるようになることで、それぞれの部下ひとりひとりが最適な方法で成長できるし、それができるようになることで自分自身も成長できる)
本書のテーマである「成人発達理論」は、人間がどのように成長していくのか、どうしたらより成長していくのかについてヒントを示してくれます。いわば「成長の見取り図」とも言えるし、人生における成長・発達という終わりなき旅を導いてくれる「羅針盤・コンパス」とも言えるかもしれません。
本書を読み進めていくことで、具体的には発達段階ごとの特徴と対応方法、どのように部下の発達段階を上げて成長を支援していくか?などの観点で学んでいくことができます。具体的な内容は読書メモのほうに記せればと思います。
なぜ部下とうまくいかないのかの読書メモ
ここからは本書を読んで重要だと思ったポイント、心に留めておきたいと思ったことをテーマ毎に箇条書きで記載していきます!
変われること変われないこと
人には変わる部分と変わらない部分があり、以下の2つの問いをすることでより自分を深く理解できると思いました。部下などの他人を理解する上での問いかけとしても役に立ちそうです。
- 5年前の自分と今の自分を比べみて、どのような点が変わったと思いますか?
- 例:5年前の自分は自分自身がとにかく努力して最大限の成果を出すことが最も重要だと思っていたし、なぜ他の人はそれができないのか?なぜ努力してないのか?などを不満に思うことがあった。今の自分は個人だけでどれだけ努力してもチームや組織の期待する成果を出すことはできないことを理解して、いかにチームのパフォーマンスを最大化するかが最も重要だし、それを推進するのがリーダーの役割だと理解できるようになった
- 逆にこの5年間、10年間を振り返って、変わらない点は何でしょうか?
- 例:仕事が人生の中で重要な位置づけであるということは今も過去も変わっていない
意識の発達について
本書の最大のテーマである成人発達理論の意識の発達について、非常に参考になりました。思えば、過去の自分は自分のことを客観視できていなかったですが、今の自分の視点で過去の自分を振り返ると、「ああ、このときこういうこと考えてたなあ」「これ今思えばかなり恥ずかしいな・・・」などの気付きがあると思います^^; 過去の醜態を思い返すのは辛いですが、ちゃんと自分が成長している証拠でもあるので、ポジティブに捉えましょう・・・!
- 意識の発達によって、人としての器そのものの大きさが大きくなっていく
- 意識段階の違いによって、世界の見え方が異なっており、知識や経験の取り入れ方も違えば、各人固有の容器によって加工されたアウトプットも質的に異なる
- 私達は自分よりも上の意識段階を理解することはできない。意識の成長がこれまで見えなかったものを見えるようにする
- 自分は現時点で自分がどのように世界を見ているかを客観的に認識することはできない。次の意識段階に到達してはじめて、過去の自分がどのように世の中をみていたかを認識することができる(今の自分がどんなレンズをかけているのかわからない)
- つまり、意識段階が成長すればするほど、客体化できる範囲が広がって、世界の捉え方が変化していく
- 人は置かれている状況でも発達段階が変化する
- 例:家庭では発達段階2であるが、学校にいるときは発達段階3になるということもある
- 自分が認識できることのすべては、世界の限られた側面しか映し出していない
チームワークや育成について
チームワークや育成観点でも良い気づきがありました。
- そもそもチームワークには、チームのメンバーがどんな考えに基づいて行動しているのかを把握する力が不可欠。つまり、他者がどんな考えを持っていて、どんな感情を持っているのかを理解する視点が必要
- どういう言葉をどんなふうに使っているかが、人となりを定義する。使う言葉がその人のあり方を映し出す。
- 問いを投げかける。自分中心の視点から一歩離れた視点を取ってもらうような問を投げかける
- 例えば、「先輩の◯◯さんはどういう仕でこの仕事を君に頼んでいると思う?」などの問いかけを投げることで、先輩の視点で意図や背景を考える訓練になる
- 自分よりも発達段階が上の視点を理解できないので、教えても理解はできない。考えて少しずつ訓練するしかない。
- 無理に成長・発達を促そうとすると、どこかで成長が止まってしまう(ピアジェ効果)
- 過去のアメリカで早期英才教育が盛んに行われていたが、無理に成長を強いられた子供の多くは20歳を過ぎたらピタリと成長が止まってしまうことが検証された
- 適切な課題と支援を与えながら、自らの力で成長してもらうことが重要
- 強引に人を成長させるのではなく、その人にふさわしい課題と支援を提供することで、その人自身で変わってもらう必要がある
※チームワークについては「チームビルディング・チーム作りが学べるおすすめ本・良書」もおすすめです!
発達段階2〜感情的になる部下〜 の特徴と対処法
発達段階2の人の特徴や対応方法についてです。以前、これらの特徴に超当てはまる人と密に仕事をしたことがありますが、かなり大変でした・・・苦笑 すぐに感情的になってしまい、論理的なコミュニケーションができない人と仕事するのは本当に厳しい。そのときはキツすぎてすぐにプロジェクト変えてもらいました(笑)今同じ状況になったら、もう少しうまくできるかなぁ・・・?
- 発達段階2の人の特徴は相手の立場に立って物事を考えることができない。他人がどのようなことを考え、どんな気持ちなのかを考えることが難しい状態。他者を自分の欲求や願望を満たす「道具」のように捉えている
- 発達段階2(感情的になる)の人はまだ内省能力が十分に備わっておらず、自分の感情を客観的に把握することができない。なので、すぐに感情的になってしまうことがある。
- また、二分法的な思考をしがち。例えば、「相手が言っていることは絶対に間違っている」「自分が絶対に正しい」などの極端な考え方をしがち
- 発達段階2の人とのコミュニケーションで最も避けるべきことは、相手が感情的になったときに、それに対して自分も感情的な反応をしてしまうこと。
- 相手が感情的になったときこそ、冷静な対応をする必要がある
- 感情の客体化の訓練をする。自分を感情と同一化しない。感情と距離を置いて、客観的に自分の感情をみる。
- 例:相手が感情的な態度を示したら、自分の足の裏に意識を集中させてみる、など
発達段階3〜優秀だが指示待ち人間の部下〜の特徴と対処法
発達段階3はわりと過去の自分、特に新卒1〜3年目あたりまでがそうだったなと思います(汗)経営企画室として戦略立案などに関わったのですが、上司というか社長の意見(=答え)をとにかく求めていて、じぶんのアタマで情報を整理して新たな戦略・方針を打ち出すなどは全くできていなかった気がします・・・。いまはもう乗り越えている(ハズ)
- 発達段階3は「他者依存段階」、もしくは「慣習的段階」と呼ばれている。
- 他者依存段階:組織や集団に従属し、他者に依存する形で意思決定をする(つまり、他者の基準によって自分の行動が規定されている状態)という特徴がある。自らの意思決定基準を持っておらず、「会社の決まりでこうなっている」「上司がこう言ったから」などを多用する傾向がある
- 慣習的段階:組織や社会の決まり事や慣習を従順に守る
- この段階の自己認識は他者や所属集団によって定義されており、自分独自の価値体系が十分に構築できていないため自分の意見や考えを表明することが難しい。
- 発達段階3の人に仕事を依頼するときは単純に仕事を振るということはしないようにする。その仕事の意味を考えてもらうようにして、本人の意見を質問するようにする。
- 例:「この仕事をお願いしたいんだけど、どう進めるのが良いと思う?」「何がこの仕事を進めるうえで重要なポイントだと思う?」など考えてもらう質問を促すこと
- こうした問いかけを地道に続けていくと、徐々に自分の意志が芽生えて、考えを表明できるようになる
- 発達段階3を超えなければ新しいものやイノベーションは生み出せない
- 既存の情報を自分の頭で整理・咀嚼して、組み合わせていくような能力が不十分なので、新製品開発やイノベーションを創出することに必要な知性がまだ足りていない
- 情報を受け身的に取り入れることはできるが、それらを組み合わせて新たな意味を構築することが難しい。
- それを乗り越えるためには、自分の考えを整理・言語化するような習慣づけをする必要がある
- 言語化するプロセスそのものが、曖昧なものを受け止めて、情報を整理したり咀嚼すること。言語化を大事にする。
- 内省する時間を確保することがとても大切。その日の振り返りや、自分がそのときに考えていることや思っていることをノートに書き留めておくだけでもOK!
- 既存の情報を受け入れたり他人の意見を鵜呑みにするだけでは到底足りていない。それらを受け止めた上で、自分の頭で考え、その上で意見を再構築して表明することが大切。上司や先輩に伺う姿勢だけでは全然だめ。
発達段階4について
発達段階4も興味深いですが、「言語化するためには語彙力が必要で、そのためには質の高い本や小説などの読書量を増やす」ことをしようと思いました。
- 発達段階4の人は、他者を独自の価値観を持つ大切な存在であるとみなし、敬意を表することができる。
- 自分の意見や主張を明確に語ることができることに加えて、自分自身を合理的に律することができる。また、仕事において、自ら意思決定基準を設定し、他者をうまくマネジメントすることができる。
- 言語化は重要だが、言語化をするときにそもそも語彙力が脆弱だと言語化にも限界がある。自分の思いや考えを表現するための語彙が不足していると言語化はままならない
- 言語化の幅を広げるためにも語彙力を身につけることは大切。お手軽な本ではなく、中身のある本と向き合っていくこと
- 「書物は思考の養分」。どんな本を読むかによってその人の意識構造も変わってくる。内容的に薄っぺらい本ばかり読んでいると、その人の思考も薄っぺらいものになってしまう
- 発達段階4から5にいくためには、「他者の存在」の捉え方がカギを握っている。
- 段階5の要素が芽生えてくると、他者の存在が自分の成長に不可欠であるという認識が生まれてくる
「自己成長」には2種類ある
自己成長の2つの種類について。これは昔から意識していたことなのですっと入ってきました。
- 水平的成長と垂直的成長の2つがある
- 水平的成長:知識やスキルを増やすことで成長を図ること
- 垂直的成長:人間としての器や認識の枠組みが変わること。知識やスキルの量を増やすのではなく、知識やスキルを加工する容器そのものが変容することで、人間性が広がったり深まるようなイメージ。認識の枠組みそのものが変化して、これまでの世界観とはまるっきり違うレンズで世界を認識できるようになる
発達段階5の人について
- 自分の性格や個性、さらには自分の歴史までも客観的に捉えることができ、それらが自分を超えた世界の中で脈々と形成されていったことを的確に認識できる
- 例:イチロー選手へのインタビューでは自分という存在を野球という大きな文脈の中で捉えている
- 発達段階5の人はすぐれた「システム思考(複眼的思考)」を持ち合わせている。相反するものから逃げるのではなく、対極にあるものを統合させるような働きかけができる。多様な観点を考慮し、対極にあるものを統合できる思考方法を持っている
なぜ部下とうまくいかないのかから学んだこととアクション
ここまで本書から学んだことをまとめて来ました。最後に自分が特に気づきが多かったこと、これからのアクションに活かしたいことをまとめて終わりとします。
まずは2つの大前提を認識する。これが無いと始まらない。
- 「部下」や「メンバー」という言葉で一括りにしない。ひとりひとりに個性や特徴があり、適切な対応をして向き合う必要がある
- 部下だけが成長すればいいのではなく、自分自身も成長すべきであると認識すること。自分の成長が部下の成長につながるし、部下の成長が自分の成長にもつながる。
本書から学んだ内容を踏まえての自分自身のアクションリスト
- メンバーとよく話すこと
- 他者がどんな考えを持っていて、どんな感情を持っているのかを理解する視点がとても重要
- すぐに答えを言わず、問いを投げかけること
- 適切な課題を与えて、問いかけ(質問)し、自分のアタマで考えてもらうこと
- 内省する時間を確保すること
- その日の振り返りや、自分がそのときに考えていることや思っていることをノートに書き留めておくだけでもOK!
- 中身のある本や小説を読んで語彙力や表現力を養うこと
- 言語化が重要スキルだが、言語化するにしても基本となる語彙力や表現力がないとうまく言語化できない。言語化できないと、物事の解像度は上がっていかない。