【書評・要約】『ハイアウトプット マネジメント』で学んだマネージャーの心得
「新任マネージャーになった!マネージャーという立場でもっと活躍したい!」という人にぜひオススメしたい書籍が『ハイアウトプットマネジメント(HIGH OUTPUT MANAGEMENT)』です。自分もマネージャーという立場で数年間仕事をしていますが、本書を読んでより管理職という役割への解像度が上がりました。もっと早く読んでおけば良かったと思う良書です。
本記事では本書の書評・要約をするとともに、自分が学んだマネージャーの心得についてまとめます。マネジメントについてより深く学びたい人や悩みを抱えている人はぜひ参考にしてください^^
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書籍『ハイアウトプットマネジメント』とは?
本書は『ハイアウトプットマネジメント(HIGH OUTPUT MANAGEMENT)』という書籍名で、当時インテルの社長だった著者・アンディ・グローブ氏が40年以上前に書いた本です。表面的ではなく本質的な内容なので40年経っても全く色褪せない名著です。ベン・ホロウィッツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏など世界に名だたる経営者や経営幹部に読み継がれています。
本書のテーマは、「アウトプットを最大化するための仕事の基本原理とは?、チームの成果を最大化するためにマネージャーが最も注力すべき仕事はなにか?、1対1の面談(ワン・オン・ワン)ではなにを話すのか?、メンバーの育成・教育はマネージャーの仕事なのか?、人事評価はどう判断すべきか?、、、」など、マネージャーなら誰もが頭を悩ませたことがある問題について、具体的な事例を元に解説・アドバイスしてくれる伝説の名著です。
自分も管理職として一皮向けたいなと思ったときに読んだのですが「もっと早く読んでおけば良かった!」と思いました。
▼書籍概要
書籍名 | ハイアウトプットマネジメント(HIGH OUTPUT MANAGEMENT) |
発売日 | 2017/1/11 |
著者 | アンドリュー・S・グローブ、小林 薫 (翻訳) |
本の概要 | インテル元CEOのアンディ・グローブ氏による著書でマネージャー向けの本です。マネージャーに必要となる、アウトプットを最大化するための基本原理、マネージャーが注力すべき仕事、1on1のやりかた、などが書かれています。マネージャー向けの名著です。 |
どんな人におすすめか | ・初めてマネージャーになった人 ・管理職として一皮向けたい人 ・チームで成果を出すには何をすれば良いのか知りたい人 |
おすすめポイント | アウトプットを最大化するための基本原理、マネージャーが注力すべき仕事、1on1のやりかた、などマネージャーに必要な考え方や知識が詰まっています。内容も具体的で事例もあるので抽象的な概念本とは違う深い理解をすることができます。 |
中身(目次) | 第1部 朝食工場ー生産の基本原理 1章 生産の基本 2章 朝食工場を動かす 第2部 経営管理はチーム・ゲームである 3章 経営管理のテコ作用 4章 ミーティング 5章 決断、決断、また決断 6章 計画化 第3部 チームの中のチーム 7章 朝食工場の全国展開へ 8章 ハイブリッド組織 9章 二重所属制度 10章 コントロール方式 第4部 選手たち 11章 スポーツとの対比 12章 タスク習熟度 13章 人事考課 14章 二つの難しい仕事 15章 タスク関連フィードバックとしての報酬 16章 なぜ教育訓練が上司の仕事なのか |
読んだ人のクチコミ | ・マネージャーとしてのアウトプットを高めるためには「テコを使う」という表現がとてもしっくり来ました。また、情報収集がとても大事であるという点も納得感があり、実際に日々の業務でとても意識しています ・人事考課を軽視していましたが、しっかりとやらなければいけないと肝に命じます。また、部下に対して何を期待しているのかを日々1on1で伝え続ける重要性もよく理解できました。この本は何度も読み返したいです! |
書評・要約|ハイアウトプットマネジメント
まずは『ハイアウトプット マネジメント』で特に重要なポイントを要約し、まとめてご紹介します。
本書で著者が最も伝えたいことは以下のマネージャーのアウトプットに関する説明だと思います。マネージャーは「個人のアウトプット」ではなく「チームのアウトプット」で評価されるべきであるという点が、プレイヤーのそれとは全く異なります。マネージャーのアウトプットは部下や影響下にあるチームメンバーが生み出した成果やアウトプットになり、式で表すと以下の通りです。
マネージャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
この式から分かりますが、プレイヤーとマネージャーは全く別のゲームをしていると認識すべきです。(私も新任マネージャーになった頃に上司から口酸っぱく言われました^^;)プレイヤーとして優秀な人でもマネージャーとしては思うように成果が出せないということが往々にしてありますが、上記のマインドセットを持ってないためゲームが違うことを理解できていない可能性が高いです。
そして、チームのアウトプットを高めるためにマネージャーがやるべきことは「部下の教育訓練」と「モチベーションの向上」の2つです。
この理由を説明します。人が仕事をしないとき、その理由は2つしかなくて、「単にそれができない(能力が無い)」か「やろうとしない(意欲が無い)」のどちらかです。それら2つの阻害要因を取り除いて、メンバーのパフォーマンスを最大化するのがマネージャーという役割なのです。
また、マネージャーの主な業務は、情報収集、情報提供、意思決定、ナッジング(突っつき)、の4つに分けられます。それらを効率よく行うためには、何よりも情報収集がすべての基礎になります。
情報収集の仕方としては、ドキュメントを見たり、MTGで情報を収集したり、市場調査レポートを読んだり、業界ニュースを読むなどして基本的な情報は常にキャッチアップしておく必要があります。中でも最も役に立つ情報はラフに交わすちょっとした会話の中にでてきます。例えば、1on1、ランチ、飲み会などで非常に濃い情報を得やすいので積極的に活用していきましょう!
特に1on1がマネージャーが入手しうつ最も重要な知識・情報ソースであるだと主張されており、上司と部下の間で1on1をすべきとインテル社の経営哲学上の根本要項の1つに設定されています。私個人の経験としても、チーム全体で行う振り返りだとなかなか改善点やもっとこういう仕事を経験したい!などの意見は出てこないのですが、1on1をしたり、個別で飲みに行くとたくさん出てきます。この経験から、多くの人がいる場では問題点は上がりづらいことを感じたので1on1などのコミュニケーションを重視するようになりました。(プロダクトマネージャーの管理職をやっていますが、同じ職種だけではなく、エンジニアやデザイナーなど一緒に働くメンバーと1on1もやっていますよ!これをやっているPMはあまりいないのですが非常にオススメです)
もちろん、情報収集するだけではマネージャーとしての価値を全く発揮できません。得られた情報を元にして、メンバーたちに情報提供(例:目標や重点事項、優先事項や方針など)をしたり、ナッジング(例:こうしたらどうかという提案する、メモを送って自分の解釈や考えを表明する、意見を示すなど)をして、組織の成果が最大化されるようにアクションをしていくのが優れたマネージャーです。
マネージャーが成果を上げる上でポイントになるのは「テコ作用」が最大化される活動にフォーカスすることです。自分にとっては少しの時間しか掛からないが、メンバーの業務遂行に長い期間に渡って影響するような活動をすることで高いテコ作用を発揮できます。例えば、メンバー向けの業務遂行の研修を実施することは、数時間の工数だけで今後数ヶ月以上に渡ってメンバーの生産性を向上する効果が出ます。1on1でメンバーの困りごとや課題を聞いて解決するサポートをすることもオススメです。15分〜30分を毎週やるだけで、1週間のメンバーのパフォーマンスがアップすると考えてOKです。また、部署同士がうまく連携できていないときに間に入ってコミュニケーションを促進する役割もとても効果的です。少しの時間で2つの部署の行動に影響を及ぼすことができます。
人事考課もメンバーのモチベーションを上にも下にも下げる大きなイベントなので気をつける必要があります。メンバーに対して何を期待しているのか、現状だと何がギャップなのか、どう埋めるか、を普段の1on1からメンバーと話し合っておく(マネージャーから伝えるというよりはメンバー自身に考えて気づいてもらう)こと。考課時にいきなり言われた!とならないようにするのが非常に重要だと感じました。また、自分の問題を棚に上げて他の人や組織を批判するメンバーも必ずと言っていいほど出てきますが、その場合はメンバー自身の問題をきちんと”具体的な事例やエビデンスを提示”して、メンバー自身に解決する必要性を認識させることが重要。
自分が本書を読んで最も参考になったのは1on1のくだりです。現在のIT・Web業界ではマネージャーとメンバーが1on1をするというのは当たり前になっていますが、40年以上前に書かれた本書で1on1の重要性を語っているのは目からウロコでした。当時のインテルは最先端のマネジメントを実施する企業だったことが分かりますね。
以上が本書の書評・要約セクションでした。これからは学びになった部分をより詳細に紹介していきます!(主に読書メモとなります)
ハイアウトプットマネジメントの読書メモ
ここからは本書を読んで重要だと思ったポイント、心に留めておきたいと思ったことをテーマ毎に箇条書きで記載していきます!
マネージャーはチーム成果を向上させるために何ができるのか?
まず、管理職などのマネージャーとしてのアウトプットは何なのか?そして、チーム成果を上げる出すためにマネージャーは何ができるのでしょうか?
- マネージャーのアウトプット=自分の組織のアウトプット+自分の影響力が及ぶ隣接諸組織のアウトプット
- マネージャーの能力や知識は、部下や関係者の能力を結集できる場合にのみ価値がある
- どれだけ知識を持っていてもそれが部下や他の部署と効果的に共有されなければ、何を知っていても無価値 →本当にそのとおりだと思います。
- マネージャーの最も重要なタスクは、部下のパフォーマンスを最大化すること
- マネージャーのやるべきことは、「部下の教育訓練」と「モチベーションの向上」の2つ
- 人が仕事をしないとき、その理由は2つしかない。単にそれができないのか(能力が無い)、やろうとしないのか(意欲が無い)
- それら2つの阻害要因を取り除いて、メンバーのパフォーマンスを最大化するのがマネージャー
- 結果を出すためには、序盤で費やした努力は終了時には10倍の利益で返ってくる。終了間際にいくら10倍のエネルギーを注ぎ込んでも全くの無駄になる。
- 期初に注いだ100時間と期末に注ぐ100時間では、最終的な着地に対する効果が全然違う
- 今日のギャップを埋めるために懸命に努力しても効果は薄い。今日のギャップは過去の計画や行動の失敗を表している。
- 今日の問題解決じゃなくて、明日の問題解決のために今日すべきことをやる。
- 1on1はマネージャーが入手しうる組織の知識・情報ソースとして、最も有効である
- 1on1を軽視するマネージャーは自分が所属する組織の情報について驚くほど貧弱になっている
- インテル社の経営哲学上の根本要項の1つにマネージャーと部下の間で1on1をすべきというのがある。忙しくてもこの時間は死守しなくてはならない。
- 1on1の主な目的は「相互教育」と「情報交換」
- 具体的な問題や状況について話し合うことで、上司は部下に技術と知識を教えたり、問題解決のアプローチを提案できる。逆に、部下は上司に対して自分の行ってることや心配事について詳しい情報を提示できる。
- マネージャーは部下を手取り足取り指導すべきか?それともやり方は任せて結果だけを見るべきか?
- →場合による。もし部下がその業務に経験が浅く、未熟ならいちいち細かいところまで指示し、教育することが必須。逆に部下が経験豊富で成熟しているなら権限を委譲するのが良い
- あなたは本当の価値を付加しているのか?それとも単に情報をあちこちへ流しているだけなのか?付加価値をどのようにして高めようとしているか?
- 自分の部署において、事態を真により良く改善する方法を絶えず探すことによって可能になる
- 原則としてマネージャーの1時間1時間は、自身が責任を負う部下のアウトプットを増やしたり、アウトプットの価値を高めることに費やさねばならない
- 自身の周囲で何が起こっているのか?いつもアンテナを張って情報収集を怠らずにいるか?
- 会社内だけではなく業界全体の動きについて目配りすることも含む
- 新しいアイデアや手法、新しい技術をいつも試みているか
- 大事なのは、単に新しい情報を知ったり学ぶだけでなく、自ら手を動かして試してみること
生産の基本原理とは?
次に価値を作る生産活動の基本原理についてです。世界最大のCPUおよび半導体メーカーであるインテル社もこの原理を踏まえて運営されているので、ぜひ理解しておきたいです。
- 最も長い(難しい、予測しづらい、コストが掛かる)ステップから生産の流れを組み立てて、逆に考える
- 朝食セットであればゆで卵をゆでる工程が一番時間が掛かる。それに合わせてトーストやベーコンを焼くタイミングを決める。
- プロダクト開発であれば「開発・実装」の工程が最も時間が掛かる。
- 生産プロセスのできる限り”最初の工程”(価値や掛けたコストが最も低い工程)で、問題を発見して解決するべき
- プロダクト開発においては、開発してリリースした後に使われない機能だと気づいたときの損失は大きい。企画段階でユーザーテストやデータ分析を通じて、「価値がある機能」を開発していく。プロトタイプを作って検証するのもこの応用である。
- この業務をうまく運用するには「インジケーター(指標」が必要になる。プロダクト開発が正しい方向に進んでいるのかそうでないかを測定する。登録ユーザー数、リテンション率、アクティブユーザー数、処理済みチケット数、開発工数、不具合検出数、問い合わせやクレーム件数、などがそれに当たる
- 毎日見ることで問題が出るとすぐに気づくことができて対策が打てる
- あらゆる生産の工程で検査ポイントを作る必要がある。また、最も低コストで高品質の結果を得るためには、できる限り前の工程で不具合を潰すべきである
- プロダクト開発の現場で言えば、リリース後の不具合は顧客対応やサポートで余計なコストが掛かるのでリリース前に不具合検出して潰しておくべき。また、結合テスト時のバグよりも単体テストやローカル開発環境でのバグのほうが修正コストは低く済む。もっと言うと、企画事態がイケてない場合は開発する前にプロトタイプ時点で修正するほうがコストが低く済む。
マネジメントはチームゲーム
次にマネージャーとしてのアウトプットを最大化するための活動についてです。
- マネージャーの個人の仕事やタスクは当人のアウトプットとはならない。マネージャーのアウトプットは部下や影響下にあるチームメンバーが生み出した成果やアウトプットである。
- 最も役立つ情報はラフに交わすちょっとした会話の中にある(1on1や飲み会、ランチなどで情報収集していく)
- マネージャーは情報収集するだけではなく、情報の提供源でもある。自分のメンバーや周囲にも知識や情報を伝達していくべき。自分たちの目標や重点事項、優先事項などの情報についても、できる限り伝える必要がある
- マネージャーの意思決定の質は、ビジネスが直面する事実や問題点をどれほど詳しく理解しているかに左右される。だからこそ、マネージャーの生活では情報収集が非常に重要になる。
- 情報収集はマネージャーのとしてのその他すべての仕事の基礎である。
- 異動直後や転職直後、初めてやる領域や事業などで業務上に必要な知識が無い場合は、特に積極的に調べたり聞いていく必要がある
- ナッジング(突っつき、ひと押し)もとても重要な活動
- 例えば、同僚に対して意思決定はこうしたら?と提案。ノートやメモを送って自分の見解や解釈、意見を示したり、プレゼンに対してコメントを述べたりすること。単に情報を伝えるというよりは自分の思う方向に進ませようとしていく活動のことを指す。指揮命令ができない・しづらい相手に対してもこれなら実行できる。
- マネージャーが毎日配分できる唯一無二の重要な資源=時間。情報収集、情報提供、意思決定、ナッジングがその多くを占める。
マネージャーが活用すべき「テコ作用」について
そして、マネージャーが成果を最大化するために是非とも活用したいのがテコ作用です。こちらを使いこなせるとチームの成果が飛躍的にアップします。
- マネージャーは「テコ作用」が最大化される活動にフォーカスすること
- マネージャーは多くのボールを同時に空中に上げておき、自分の部門のアウトプットを最高に上げると思われる活動に自分のエネルギーや注意を注ぐべき
- マネージャーの生産性(単位時間あたりのアウトプット)を増やす方法
- マネージャーが自ら活動を遂行する速度を速めて、仕事をスピードアップする
- いろいろなマネジメント活動に関連のあるテコ作用を増加する
- マネジメントの活動を、テコ作用の低い活動からテコ作用の大きい活動の割合を増やす
- 自分にとってはわずかな時間しかかからないが、チームメンバーの業務遂行には長い期間にわたって影響するような活動を展開することで、高いテコ作用を発揮できる
- テコ作用はネガティブにも働くので注意
- 例えば準備をせずにMTGに望むと時間を奪うだけでなく、その時間にできた他のことをする機会も奪ってしまう
- 元気のないマネージャーや、しゃべりまくるだけのマネージャーもネガティブのテコ作用が無限になる
- 「マネージャーの余計な干渉」もネガティブなテコ作用である。部下が自分に期待されることをずっと狭く考えはじめ、問題を上司に任せるようになってしまう。
- 権限移譲をした後でも、仕事の完了には責任がある。委譲した仕事はモニタリングすること。干渉ではなく、活動が期待通りに進行しているかをモニタリングする。自分がよく精通している業務はモニタリングが容易なので、そういう活動を任せるのが良い。もちろん、自分よりうまく業務を遂行できる専門家やプロに任せるのも大事。
- モニタリングの頻度や程度は、部下の経験や実績(タスク習熟度)によって変える。部下の経験が浅いときは多めにモニタリングして、経験ある部下ならそこまでモニタリングはしなくて良い。
- マネージャーは部下のタスク習熟度をできるだけ速く伸ばしてやる必要がある
- マネージャー自身が部下の訓練をすべき。訓練はマネージャーとして遂行できる最高のテコ作用を持つ活動のひとつ
- 訓練はハードワーク。訓練をすると、質問に答えられなかったり、説明できるほど理解できてなかったり、自分がいかに知らないかを思い知らされる。ひとつのことを教えるにはさらに深い知識が必要になる。教えることで自分自身が一番学びになる。また、訓練を通じて部下がパフォーマンスを上げたときほど嬉しいものはない。
モチベーションについて
マネージャーのやるべきことは、「部下の教育訓練」と「モチベーションの向上」の2つと述べましたが、その1つであるモチベーションの向上についてです。
- チームはいかによくまとまっていても、いかによく指示を受けても、構成するメンバー1人1人のチカラ以上のアウトプットは出せないし、成果も上げられない。マネージャーとチームメンバーがそれぞれ絶えず最善を尽くそうと努力しないかぎりすべてが無益になる。
- 自己実現がモチベーション源になると、行動に対する人の意欲は無限になる
- 他のモチベーション源は欲求が充足されると消えてしまうが、自己実現の欲求だけは、より高い行動水準へと人を推進しつづける
- ベストを尽くさせる内面的なチカラとしては、「より高い能力」か「達成意欲」の2つがある
- より高い能力:例えば毎日練習しつづけるバイオリニスト(尊厳や承認欲求以外のなにかに動かされている)。少しでも上手になりたいから努力する
- 達成意欲:アウトプットを評価して強調する環境を作り出す必要がある。例えば、知識がある人ではなく、具体的な成果を上げた人を評価する。インテル社の研究機関では勤労意欲が高く知識欲もある博士号だが”達成されるもの”が少ない人よりも、実際に成果を生み出す若手エンジニアのほうが高く評価される仕組みになっている。
- 自発的に出てこない場合は目標管理(MBO)システムを利用するなどで達成意欲を湧き出させる
- 自己実現の欲求においては、進捗度や達成度を測定する尺度やフィードバックが必要になる。フィードバック機構は必ずしも他人からじゃなくても良い。例えば、バイオリニストは正しく響いているかそうではないかが分かるのでそれをフィードバックに次よりよくするために試行錯誤できる。
- モチベーション階層の低い人にとって金銭報酬は明らかに重要
- モチベーション階層がどのあたりにいるかを簡単に測定するテスト
- ある個人にとって昇給の絶対額が重要ならば生理的or安全への欲求内で働いている。昇給が他人と比べてどうかが問題ならば尊厳or承認or自己実現の欲求で働いている。
- モチベーション階層がどのあたりにいるかを簡単に測定するテスト
人事考課について
管理職として最も重要といって良い活動の1つが人事考課です。これについて学びメモを記します!
- 人事考課の基本的な目的は「部下の業績を改善すること」
- 部下の技能水準(スキルや能力):どんな技能に欠けているかを発見し、その課題を修正する方法は何かを発見すること
- モチベーション:同じ技能水準の中でより高いパフォーマンスを出せるようにモチベーションを強めること
- 人事考課は大組織だけに適用されると考えてはいけない。2人のアシスタントしかいない組織など大小問わず必要な経営管理業務の1つ。つまり、パフォーマンスが業務遂行上の問題となる限り、考課は絶対に必要。
- 考課には「業績の査定」と「査定内容を伝えること」の2つあり、どちらも難しい
- 業績の査定
- 査定の難しさを弱める方法:マネージャーが部下に何を期待するのかを明確にする。その上で部下がその期待通りに実行できたかどうかを判断する。
- 考課における最大の問題:マネージャーが部下に何を期待しているかをはっきり決めていないこと。自分に何が欠けているのかが分からないと、それを得ることはできない。
- 査定方法はアウトプットの測定と、内部的な測定の2つ。ウエイトづけは組織や状況によって変わる。
- アウトプットは成果物や具体的な数字、図表などで表せるもので現在の目標に直接的に貢献するもの。いわゆるパフォーマンス。
- 内部的な測定:将来のアウトプット出すためにお膳立てをするもの。例えば、メンバーのモチベーション、人材採用や育成・訓練、人材配置、継続的に無理が無いオペレーションになっているか、スピーディーに改善する体制や仕組みを作れたか、など。すぐには成果につながらないが今後もパフォーマンスを出すために重要な活動。
- 可能性(ポテンシャル)という罠は避ける。いつでも可能性ではなく実績で評価すること。
- 査定内容を伝える
- 3つのL:Level(相手のところまで降りて率直に)、Listen(よく聞く)、Leave yourself out(客観的にみる)
- 重要なことは「オドロキを無くす」こと。普段の1on1からメンバーに対して、何を期待しているか、できていること、できてないこと(課題)、を伝えたり指導すること。考課時にいきなり言われても納得しない。
- 文書を渡すタイミング:対面で話し合う「少し前」に文書で先に考課を与える。事前に読んで頭を冷やしておけるし、いきなり口頭で伝えられるよりも冷静に受け入れやすくなる。
- パフォーマンスが悪い人は自分の問題を無視する傾向が強い。その真実を示すことができる事実と具体例(つまり証拠)を持つことが肝要。問題があると認めても、それは自分の問題ではないとすり替えて”第三者を非難する”ことで自衛するメンバーもよく出てくる。この場合もそれが”自分の問題である”と認識させなければならない。
ハイアウトプットマネジメントのその他のポイント
その他、ハイアウトプットマネジメントにかかれていた内容で良かったポイントを記載します!
- リミッティング・ステップ(絶対に予定通り実施せねばならないもの)を中心に組み立てる
- 類似したタスクをバッチ処理(まとめて実施)する
- スラック(たるみ)=スケジューリングに多少のゆとりを持つこと
- マネージャーが長期にわたり部下の生産性向上のため実施するようなプロジェクトを持つこと
- これがないと自分の空き時間を部下の余計な干渉に使いがち
- 仕事の中断への対策
- ドキュメントを整備する。顧客や同僚からの疑問・問い合わせは同じようなものが繰り返される。それらスムーズにさばくための「標準対応策」を用意しておく。具体的にはWikiやマニュアルを整備して問い合わせに対してURLを返すだけでOKとするなど。
- ダッシュボードを整備しておく。情報をまとめて可視化・保管しておけば、問い合わせの度にいちいち調べる必要が無くなる
- ミーティングは定期性を持たせる。またミーティングがどう進行するのか、議論する内容はなにか、何を意思決定するのか、も出席者が理解していなくてはならない
- マネジメントの成否は中央集権と分散化のバランスがカギ。どちらに偏りすぎてもダメ。
ハイアウトプットマネジメントから学んだマネージャーの心得
ここまで本書から学んだことをまとめて来ました。最後に自分が特に気づきが多かったこと、これからのアクションに活かしたいことをまとめて終わりとします。
- マネージャーはチームの成果を高めるのが仕事。そのためには①メンバーのスキルアップ教育 ②メンバーのモチベーション向上 の2つをする必要がある。
- 具体的な仕事は①情報収集 ②情報提供 ③意思決定 ④ナッジングに分類される
- 特に大事なのが情報収集。中でもメンバーとの1on1や雑談を通じて得た情報が最も役に立つ。積極的に1on1や飲み会をして情報をGETしていく
- 課題に感じていること、もっとこうしたいなどの要望、どうすればチームがよりよくなるか、の意見などを常に集めておく
- マニュアルやドキュメント、ダッシュボードを整備も大切な業務
- マニュアルがあるとメンバーが一人でも業務を進められる。ドキュメントをまとめておくと新メンバーが入ってもすぐに稼働できる。「これってどういう仕様なの?どういう経緯があったの?」などの問い合わせ時も普段からWikiにまとめておけばすぐに回答できる。ダッシュボードを整備すると数字や指標の問い合わせがあったときにイチイチ集計せずにすぐに提供できる。
- 普段から1on1でメンバーに何を期待しているのかを明確にし、伝える。普段から、期待していること、今できていないこと(課題・ギャップ)、課題をどう改善していくか、を伝えたり、考えてもらう。