【書評・要約】『一兆ドルコーチ』シリコンバレーの伝説的コーチが教えるマネジメントの極意

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チームや組織の成果を最大化させたいマネージャー・管理職の方や、新任マネージャーとして基本を学びたい方など、マネジメントに関わる方にぜひ読んで欲しい一冊が『一兆ドルコーチ』です。

自分は現在ITメガベンチャー企業でプロダクトマネージャー組織のマネージャーをしております。本書はグーグルやアップルなどの世界的なIT企業を支えた伝説的コーチ、ビル・キャンベル氏の教えをまとめた本なので、内容的にも非常に親和性があり、イメージが湧きました。(もちろん、本書の内容は普遍的なのでIT企業でなくてももちろん活かせる内容です)

本記事では本書の書評・要約をするとともに、自分が学んだことをまとめています。マネジメントについてより深く学びたい人や悩みを抱えている人はぜひ参考にしてください^^

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書籍『一兆ドルコーチ』とは?

本書『一兆ドルコーチ』は、シリコンバレーで「ザ・コーチ」として知られ、あらゆる成功者に慕われた伝説のリーダー、ビル・キャンベルの教えをまとめたものです。ビル・キャンベルは、スティーブ・ジョブズと共にアップル帝国を築き、エリック・シュミットらとグーグルを巨大企業に導き、アマゾンの苦境を救った人物で、2016年に逝去しました。本書はビルに師事した著者たちがその教えをまとめ・公開することで、マネージャーがコーチになるヒントにするという目的で書かれました。

本書の著者は、エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグルの3人です。彼らはいずれも、ビル・キャンベルに師事したシリコンバレーの著名な経営者や技術者です。

  • エリック・シュミット:Googleの元CEO、Alphabetの元取締役会長(現在は技術顧問)
  • ジョナサン・ローゼンバーグ:Googleの元製品担当上級副社長、Alphabetの顧問
  • アラン・イーグル:Googleのエグゼクティブコミュニケーションの責任者、セールスプログラムの責任者

本書では、ビル・キャンベルの実践的な教えと、それを裏付ける研究や理論が組み合わされたものです。ビル・キャンベルは、自分の経験や直感に基づいてコーチングを行っていましたが、その方法は後になって科学的にも有効であることが示されています。本書では、ビル・キャンベルのエピソードや言葉を通して、彼がどのようにリーダーシップを発揮し、チームを導き、ビジネスに愛を持ち込んだかが分かります。また、本書では、ビル・キャンベルの教えを自分の仕事や人生に活かすための具体的な方法も紹介されています。

▼書籍概要

書籍名1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え
発売日2019/11/14
本の概要本書は、シリコンバレーの伝説的コーチだったビル・キャンベルの教えをまとめた書籍です。本書は、ビル・キャンベルがどのようにリーダーシップを発揮し、チームを導き、ビジネスに愛を持ち込んだかが分かります。
どんな人におすすめか・マネージャーとして部下の成長を支援したい人や新任マネージャー
・チームワークを高め、成果を出したい人
・コーチングについて理解を深めたい人
・シリコンバレーにおけるマネジメント成功事例に興味がある人
中身(目次)序文 ── シリコンバレー最大の伝説(アダム・グラント)
Chapter1 ビルならどうするか?―シリコンバレーを築いた「コーチ」の教え
Chapter2 マネジャーは肩書きがつくる。リーダーは人がつくる―「人がすべて」という原則
Chapter3 「信頼」の非凡な影響力―「心理的安全性」が潜在能力を引き出す
Chapter4 チーム・ファースト―チームを最適化すれば問題は解決する
Chapter5 パワー・オブ・ラブ―ビジネスに愛を持ち込め
Chapter6 ものさし―成功を測る尺度は何か?
読んだ人のクチコミ・心理的安全性が成功するチームには必要だと学び、チーム内での懇親会や1on1もせ曲的に実施するように意識しはじめました
・マネージャーになりたての時期に読んで感銘を受けました。マネジメントにはコーチングはかけがえのないスキルだと理解しました
・マネージャーの重要な仕事について理解が深まりました。新任マネージャーの推薦図書に加えました。

書評・要約|一兆ドルコーチ

まずは『一兆ドルコーチ』で特に重要なポイントを箇条書きでご紹介します。章ごとの内容をひとことでまとめると以下のようなかたちです。

  • リーダーは人(部下)がつくる。あらゆるマネージャーの最優先課題は部下の「しあわせ」と「成功」である。
  • 心理的安全性が高いチームをつくる。出発点は信頼であり、信頼は正直さ、謙虚さ、約束を守ること、思慮深さなどで築かれる。
  • チームファースト。いつでもチームが最優先であり、勝利できるかどうかは最高のチームを持てるかにかかっている。
  • ビジネスに愛を持ち込む。ビルは人間の部分と仕事の部分を分けず、その人間の存在まるごと扱った。メンバーに関心を持ち、創業者の事業へのビジョンと愛情を愛した。
  • 成功のものさし。ビルはコーチとしての報酬を受け取らなかった。自分が何らかの形で助けた人が優れたリーダーになったかが彼の「ものさし」だった。

また、自分が特に学びになったことはこちらです!ぜひこの内容だけでも持ち帰ってくれると嬉しいです。

  • 優れたマネージャーは優れたコーチである。マネジメントになればなるほど、自分が成果を出すためにはメンバーを成長・成功をさせることがますます重要になる。
  • メンバーが実力を発揮し、成長し、成果を出せるように支援をするのがマネージャーの重要な仕事
  • パフォーマンスが高いチームは心理的安全性が高い。また、個人よりもチームの業績を優先するメンバーで構成されていること。
  • チームや周囲の部署から情報収集を積極的に行って、「いまなにが起きているのか」を常に正確に把握する
  • 1on1とスタッフミーティング(定例)をちゃんと有効活用すること
  • フィードバックは人事考課まで待つのでは遅すぎる。その直後にフィードバックして、軌道修正をしてあげること
  • 問題そのものよりもチームに取り組むこと。適材適所に人材が配置されているか、問題解決するためのチームになっているか?をまず解決する

一兆ドルコーチの読書メモ

ここからは本書を読んで重要だと思ったポイント、心に留めておきたいと思ったことをテーマ毎に箇条書きで記載していきます!

優れたマネージャーは優れたコーチである

まず本書では「優れたマネージャーは優れたコーチである」というフレーズが何度か出てきます。コーチングのスキルを学ぶことが良いリーダーになるための1つの条件であることが理解できます。

  • どんなチームにとっても最高のコーチはそのチームを率いるマネージャーである。
  • 有能なマネージャーになりたければ有能なコーチにならなければならない
  • 人は高みに登れば登るほど、自分が成功するためには他人を成功させることがますます必要になる
  • すぐれたコーチは選手がどうすればもっとよくなるかを常に考えている。選手がもっと力を出せる環境をつくることに喜びを感じる。

成功するチームに共通する特性

次に成功するチームが持つ5つの特徴についても興味深いです。【書評・要約】世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法でも取り上げた内容ですね!

  • Googleの大規模調査である「プロジェクト・アリストテレス」で5つの特徴が明らかになった
    • 最高のチームは、心理的安全性が高い(心理的安全性)
    • 最高のチームは、明確な目標を持つ(明瞭さ)
    • 最高のチームは、仕事に意義を感じる(意味)
    • 最高のチームは、お互いを信頼している(信頼関係)
    • 最高のチームは、チームの使命が社会によりよい影響を与えると信じている(影響力)
  • 5つの特徴の中でも最も重要なのが心理的安全性。最高のチームとは「心理的安全性が最も高いチーム」であり、その出発点は「信頼」である
  • パフォーマンスが高いチームの条件としては、個人よりチームの業績を優先する人で構成されていること

マネージャーの大事な仕事

マネージャーは何を意識して仕事すれば良いのでしょうか?何がマネージャーの重要な仕事なのでしょうか?本書ではそれらも随所で語られています

  • 前提として、どんな会社の成功を支えるのも「人」。あらゆるマネージャーの最優先課題は「部下の幸せと成功」である
  • マネージャーの最も大事な仕事は、メンバーが仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手助けすること。「支援」「敬意」「信頼」を通じてその環境を生み出すべき
    • 支援:メンバーが成功するためのツールや情報、トレーニング、コーチングを提供し、スキル開発するための支援をする
    • 敬意:メンバーひとりひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重すること。会社の目標に沿う方法で彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けする
    • 信頼:メンバーに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させること。彼らはうまくやると信じること。
  • 「誰に何を伝え、共有すべきか」を知ることもマネージャーの大切な仕事の1つ。この「知識の共有化」は正しくやればチームのパフォーマンスを飛躍的に高めることができる。
  • チームやメンバーから情報収集をする。何が起こっているかを常に把握している必要がある。
  • 「1on1を正しくやる」と「スタッフミーティング(部門横断の定例)を正しくやる」ことがビルキャンベルのマネジメントの重要原則の筆頭だった。
  • スタッフミーティング
    • スタッフミーティングは最も重要な問題と機会について話し合う場でなくてはならない。全員に共通認識をもたせ、適切な議論を行い、意思決定を下すために、ミーティングを利用すること。
    • 重要な問題のほとんどは複数部門に関わる問題だし、部門横断で一同に会して集団で議論することで共通認識ができあがり、部門の垣根を超えた協力関係が生まれる
  • 1on1
    • 1on1は部下が実力を発揮し、成長できるように手助けできる最良の手段無駄話をしてから仕事の進捗を確認する何に取り組んでいるか?うまく行っているか?何か困っていて力になれることはあるか?同僚との関係はどうか?チームの状態はどうか?チームの問題はなにか?チームがやろうとしていることを理解しているか?
  • 報酬(給料)に関する問題
    • 大多数の人にとって「報酬=金額」だが、それだけではない
    • 報酬は経済的価値だけではなく、感情的価値の問題でもある
    • 報酬は会社がメンバーに対して、承認、愛と敬意、地位を示すための手段であり、メンバーのモチベーションを維持し、会社の目標に強く結びつける効果がある
  • Good、Badを報告させる
    • チームは成功事例を見栄え良く見せたがるのでGoodは報告が上がりやすい(うまくいったこと、満足できること)
    • Badも報告してもらうこと(あまりうまく行ってないこと)
  • フィードバックは瞬間を捉えること
    • 率直なフィードバックのカギは待たないこと。そのほうが、的を得た偽りのないフィードバックを与えることができる。
    • フィードバックを人事考課のときまで待つのでは遅すぎる。その瞬間(または直後)に、その問題に的を絞ったフィードバックを与える
  • 「すべきこと」を指図しない
    • 質問し、耳を傾けるが、ほとんどの場合、「何をすべきか」の指図はしない。「なぜそれをやるべきか」「どのへんがポイントなのか」を伝えること
  • 問題そのものよりも、チームに取り組む
    • いきなりチームが抱える問題を分析したり解決するのではなく、まず適切なチームを適所に置いて問題に取り組むこと
    • 例えば、目の前の問題について「状況はどうか?問題はなにか?選択肢はなにがある?」など問題の分析や解決に焦って取り組まない(これはこれで問題把握という点ではとても重要ではあるが)
    • 「誰がその問題に当たっているのか?適切なチームが配置されているか?彼らが成功するために必要なものは揃っているか?」など問題を解決するための土台、チーム、環境、をより気にする
    • チームをよくすれば問題は解決できる
  • どんな人でチームを構成するか
    • 4つの資質:知性、勤勉、誠実、グリット(やりぬく力)、がある人を採用する
    • チームファーストで考えているか?つまり、自分の成功が他人との協力関係にかかっていることを理解している人か?ギブアンドテイクを理解している人か?会社を第一に考える人か?常に学び続けている人か?
    • スタープレイヤーから2,3番手に至るまでチーム全員が、個人の利益よりもチームの利益を優先するチームは強い
  • チームの人間関係を育む
    • 同僚との人間関係がチームビルディングの重要な要素。話しやすく、信頼しあえる関係をつくる。
    • ペアで仕事にあたって、共同で問題解決をしてもらう。課題やプロジェクトを任せて、2人で自由にやってもらう。これで大抵の場合はその二人の間には信頼関係が生まれる。
  • 信頼と文化をつくる
    • 短期目標は長期目標ほど重要ではないという意見にはビルは反対していた。スリム化を図ってでも数字を達成したい、それが自分たちの目指す文化である。
    • 重要なのは短期目標の達成ではない。オペレーショナル・エクセレンスが少しでも欠けた状態を許さない文化を醸成することが大切。業務運営の強力な規律を植え付けることもまた長期的成功への投資になる。勝ちグセをつける。負けグセがつくとあと少しで今後も勝てなくなる。
  • コミュニティをつくる
    • 仕事でも仕事以外でもコミュニティをつくり、絆を作ることでチームはずっと強くなる
  • 5分間の親切をする
    • 親切をする側にとっては簡単で5分もかからないが、受ける側にとってはとても大きな意味のあるものごとをする
    • 成功するためには誰にもいつでもなんでもしてあげるわけではない。自らの負担より、他人を助けるメリットが上回るかを常に意識する必要がある。

まとめ|一兆ドルコーチから学んだこと

ここまで本書から学んだことをまとめて来ました。要約のところに書いた内容と重複しますが、最後に自分が特に気づきが多かったこと、これからのアクションに活かしたいことをまとめて終わりとします。

  • 優れたマネージャーは優れたコーチである。マネジメントになればなるほど、自分が成果を出すためにはメンバーを成長・成功をさせることがますます重要になる。
  • メンバーが実力を発揮し、成長し、成果を出せるように支援をするのがマネージャーの重要な仕事
  • パフォーマンスが高いチームは心理的安全性が高い。また、個人よりもチームの業績を優先するメンバーで構成されていること。
  • チームや周囲の部署から情報収集を積極的に行って、「いまなにが起きているのか」を常に正確に把握する
  • 1on1とスタッフミーティング(定例)をちゃんと有効活用すること
  • フィードバックは人事考課まで待つのでは遅すぎる。その直後にフィードバックして、軌道修正をしてあげること
  • 問題そのものよりもチームに取り組むこと。適材適所に人材が配置されているか、問題解決するためのチームになっているか?をまず解決する

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